どっちにいくか

 昨今の投資&FIREブームで、比較的金融資産を持たない若い世代にも投資が広がっている。
つみたて NISA や ideco といった税制優遇の後押しもあり投資に対するハードルというのはかなり下がっているように見受けられる。
 FIREっていうのは、経済的自立を意味する言葉だ。1日8時間週5日フルタイムで働くのが当然という価値観に疑問を投げかける人も多い。お金と時間に縛られず、自分の好きな趣味であるとかボランティア活動に注力したいという気持ちは分かる。
 そうした投資ブームが広がる中で、話題となったのが岸田新首相の金融所得課税への言及。すでに国は、金融資産の投資収益によって生活をしていこうと考えている人たちに目をつけているということなのだろう。表向きは金融所得とその他の所得との税率の不公平感の解消。しかし、資産1億超のようなレベルだけにこの話は留まらないのではないかと考えている。
 どういうことかと言うと、政治や経済を主導する立場の資本家にとってみれば、株式等の投資収益によって労働者からの離脱を試みる動きというのは全くもって面白くないことだからだ。本来、資本主義は多くの労働者と数少ない資本家によって成立している。であるからこそ、資本家は労働者に対してはどれだけ会社の利益が出ようとも、資本家になることを考えるようなまとまった金は与えず、かといって謀反を起こさない程度のなるべく安い給料で満足してほしいと願っている。
 一旦整理するが、FIREの考え方の根本は、「資産の4%で生きる」と言うことにある。4%という数字は、ざっくり言うと経済の成長率にインフレ率を差し引いた値だ。FIREを志向する人々は予め自身が必要な生活費を求め、そこから必要な資産額を逆算する。だからFIREを達成するための資産額、そして難易度は人それぞれということだ。さらにいえば、配当所得は現行の税制上有利という話もあるのだが、それは一旦置いておく。
 かなり合理的な発想だと私は思っている。しかし、安く使える労働者がたくさん欲しい資本家にとってみれば、やはり警戒すべき動きだ。目標資産を達成次第、労働者からの卒業をはかる図るという動きが加速すれば、最終的には働き手の不足と賃金アップに繋がりかねない。また、すでに累進制度で最高税率を課されている年収2000万超というような高給リーマンにとっても、低所得の人間が悠々自適に過ごしていているというのは受け入れにくいかもしれない。
 これらの争いの火種を消す方法の一つとして、移民政策を推す展開もあるかもしれない。すでに世界経済の中でも存在感を失っている衰退国家であるが、アジアの貧困国の人々の中には、好んで移住したいと言う人もいるかもしれない。
 国内での再分配政策を進めるのか、海外からの奴隷を求めるのかどちらに進んでいくのか注目したい。